この記事では、以下の例を通して「身体の生理的反応」を解説していく。
風邪を引いた際の反応
「風邪」と診断された男性がいたとする。
バイタルは以下の通り。
この発熱は以下の機序で生じている。
- 免疫活性食細胞は、白血球(好中球やリンパ球など)やマクロファージといった「免疫活性細胞」が風邪ウイルスを迎えうつ(ウイルスなどの異物を食べるように取り込んむ)。
- ウイルスとの戦いが始まると、免疫活性食細胞の働きで「サイトカイン(免疫反応において細胞間相互作用をつかさどる液性因子の総称)」という物質がつくられる(サイトカインにはインターフェロン・インターロイキンなどがある)。
- 例えばインターフェロンは、組織細胞がウイルスに感染するとT細胞や感染した組織細胞から遊離され、未感染の組織細胞のウイルスに対する抵抗性を増強したり、感染した組織細胞に対するリンパ球の感染性を増強したりする。
- この様に、ウィルス感染に対して様々な活躍をするサイトカインは、血液の流れにのって、やがて脳にも達する。その際、サイトカインでは通過できない血液脳関門の先にある視床下部へ情報を伝達するためプロスタグランジンE2(PGE2)という「メディエイタ」の産生を促す。そして、この「メディエイタ」が情報を持って視床下部へむかうことになる。
- メディエイタから情報を受け取った視床下部の体温調節中枢は、身体各部に体温を上げるようにという指令を出す。この命令にもとづいて、以下などが生じ発熱が促される。
皮膚の血管が収縮
筋肉をふるえ
・・・など。
発熱が重要な理由
発熱するには何らかの理由があると考えられ、例えば以下などが言われている。
病原菌の増殖が抑制される
風邪などのウイルスは、低温の方が繁殖しやすいという性質を持っているが、発熱するとそれが抑制される。
白血球の機能が促進される
白血球の動きが活発になり、新入した外敵を食べる作用が活発になる。
免疫応答が促進される
外的と戦う免疫機能が高まる。
発汗による脱水
あまりにも体温が上昇すると、恒常性を保とうとする観点から発汗も生じる(前述した要因で発熱しているので、ウィルスが撃退されない限り体温は平熱よりは高いままだが)。
すると「発汗による脱水」が生じる。
「脱水=体液の低下⇒血液量も低下かする」なため、血圧が低下し、それに伴い以下も生じる。
- 「血圧↓」により『高圧受容器反射』が反応し「脈拍↑」が生じる。
- 血液量低下により体内へのO2供給が不十分となり、『化学受容反射』により「呼吸数↑」(や脈拍↑)が起こる。
したがって、脱水予防のために水分補給は重要となる。
ただし、体液には(水分だけでなく)Na+も必要なので「(適度なNa+濃度な)生理食塩水」が水分補給には理想的。
そして、「適度な濃度の生理食塩水」ではなく「単なる水」や「濃度の濃い生理食塩水」であった場合は以下が生じる。
単なる水
浸透圧により細胞内液が増大
低ナトリウム血症
けいれん
細胞膨化で死亡の可能性も
濃度の濃い生理食塩水
塩分の濃度が濃すぎるものを摂取し続けると高血圧。
補足:浸透圧とは
浸透圧とは「水を動かそうとする圧力」を指す。
料理で例えると、塩は砂糖や酢と比べ浸透圧が高く、水を引き出すのに適していると言われる。
例えば「キュウリを食塩水に浸ける」と「塩によって高くなった浸透圧」の影響で、「キュウリの水分が食塩水へ移動する(つまり、キュウリの水が抜けてシワシワになる)」という現象が起きる。
これは「浸透圧により、水は(塩分などの)濃度の高いほうへ移動する性質があるから」と考えられる。
次に「きゅうりの漬物(塩分多)を、普通の水に浸ける」と浸透圧の影響で「漬物の中に水が移動する」という現象が起きる。
すると、シワシワだった漬物は水分を吸収してパンパンになる。
これが細胞内(きゅうり)・細胞外(きゅうりの外)でも生じていると考える。
「(塩分の入っていない)単なる水」を補給してしまうと、細胞内のNa+濃度が高いことから、細胞内に水が急激に流入してしまう(細胞がパンパンになる=細胞膨化)。
そうならないためにも、適度な水分補給には適度な塩分も必要となる。